嘘つき②

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高級クラブ 【ZARA】の重厚なドアを開ける。 応対に出てきた黒服は 一瞥するとお辞儀をし 何も言わずに 奥のボックスを手で指し示した。 煙草を咥えたまま 通路を歩き ボックスのソファーに座る人物の前で止まり 深々と頭を下げる。 「おう。兵動。来たか。」 太い葉巻を咥えた男がひらひらと手を挙げた。 稲山会No.3 桐生組 組長 桐生芳雄。 両腕にホステスを抱えながら ニヤッと笑う。 今時 葉巻も無いだろう。 ゴッドファーザーを気取るのは古過ぎるし 体格はそこまで貫禄も無く No.2の財津の方が 恰幅がよく似合うぐらいだ。 兵動は内心そんな事を考えながら すっと差し出された灰皿にポンと煙草の灰を落とす。 このクラブナンバーワンのアイは ニッコリと笑みを浮かべた。 座るように目で促され ソファーに腰を下ろす。 ヘネシーのロックがサッと前に置かれた。 基本 ストレートはぬるくて好きではない。 水割りなど以ての外だ。 煙草をクリスタルの灰皿に押しつけ グラスを持ち口をつけると 桐生はホステスを離し 身を乗り出した。 「で。首尾はどうだ。」 はい。とスーツの内ポケットから小切手を出し 目の前のテーブルへ置く。 書かれた金額に 二マッと笑みを浮かべる。 掴んで ボックスの横に立つ安浦に渡すと ご満悦で グイッと水割りを飲み干した。 「お前に任しておけば間違い無いな。」 「ありがとうございます。」 頭を下げると バンっと肩を叩かれる。 触るな。馬鹿野郎。 そう思いながら また頭を下げた。
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