嘘つき②

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「可愛い子でしょ。これで組対だなんて 信じられないよねえ。厳ついのばかりって イメージを払拭しようとしてるのかな。」 楽しげな声音にため息が出る。 怒る気にならないのが 何の理由も無く この上司が俺を呼びつける筈がないと わかっているからだ。 グラスにバーボンを注ぎ 氷を一つ。 「そうですね。どちらかといえば好みです。」 敢えてズラした返答を返す。 相手にするなら女より男の方が面倒ではない。 女を抱くのは仕事だけと決めている。 抱くといっても肌に口をつける事もしない。 勝手に跨り 勝手にイクのを眺めるだけだ。 「この組対を誑かせとでも。そういう話ですか。」 仕事にセックスは付き物。 情報を得る上では大事なツール。 初めて会った時の 煙草の件は そういう意味だと解釈している。 いくらトラウマがあろうとも仕事の為に必要なら 何だって我慢出来る。 毎晩吐いていたガキの俺はもう居ない。 その判断を間違えずに出来る。 自分など無いのだから。 だからだと。 うーん。と思案する声が聞こえた。 「どっちかって言うと逆じゃない? カズ。ロックオン。らしいよ。 ね。楽しそうでしょ。まあ。報告はあげてねー。」 クックッと笑い声が聞こえるとプツッと 電話が切れる。 「・・・ロックオン?」 兵動はグラスを口につけたまま ポカンと その場に立ち尽くした。
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