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「まぁ、嫌いとか言われたら悲しいよな。でもさ、あれは「ちょっと頭、冷やしてきますね」」
冬也先輩の言葉を遮って、琉磨くんと同じように研究室を出た。
冬也先輩が泣いているあたしをすごく心配してくれているのはわかっている。
でも慰めの言葉を言われれば言われるほど、さっきの言葉が現実味を帯びてしまう。
元々琉磨くんに好かれてないし嫌われていることはわかっていたのに、いざそう言われるとどうしても勝手に傷ついてしまう。
言われたか言われてないかだけであたしたちの関係はその前と何も変わってなんかいないのに。
「優良研究生も恋になると不安定ね.......」
研究室でそんな会話がされていたことは聞こえてはいなかった。
「泣くなんてな.......」
屋上にたどり着いたあたしはぼーっと空を眺める。
──やっぱり俺、お前嫌い
さっきの琉磨くんの言葉が何度もリピートされる。
それと一緒に脳裏に浮かぶのはあの日のこと。
『俺、大学ではお前の近くにいかないから』
高校の卒業式のあとに琉磨くんの口から告げられた絶縁宣言。
『え、どうして?』
そう聞いたあたしに彼はチュッと一瞬で軽いキスをした。
『りゅ、琉磨くん?』
『俺、彼女できたからさ。ばいばい』
それが彼と話した最後の言葉でそのままあたしの部屋からいなくなった。
突然絶縁宣言されて、突然キスをされて、わけがわからないままあたしは泣きじゃくった。
琉磨くんのことが好きだったから、キスなんて嬉しいはずなのに、こんな悲しいキスがあることをあたしは知らなかった。
結局メッセージアプリもブロックされていて、そこから琉磨くんと連絡をとったことなんてなかった。
たまに近くに行っても嫌な顔をされるだけで、昔のようにはもう戻れなくなってしまっていた。
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