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「泣いてんの?」
──バタンッ
激しく屋上のドアが開く音と同時に聞こえてくるやっぱり不機嫌そうな声。
「泣いてない」
琉磨くんに涙を見られないように背中を向けたまま目を擦る。
「なんで泣いてんの?」
隣にそっと座る琉磨くん。
中庭では隣に座るのも嫌がってたくせに。
「だから泣いてないって」
「あのさー、お前のことなんてすぐ分かるんだよ」
「え?」
「どれだけ長いことお前のこと見てると思ってんだよ」
あたしの顔をのぞき込む瞳にいつもの冷たさはない。
「琉磨くん?」
「おまえが泣いてんのって俺のせい?」
あたしの頬に琉磨くんが手を伸ばして触れる。
「琉磨くんのせいなんかじゃ.......ない」
首を横に振る。
「そ」
一瞬にして不機嫌な彼に戻ってしまう。
少し優しい声色に戸惑ったけど、本当に一瞬だけだった。
さっきの言葉に勘違いしそうになるけど、ただ「昔よく一緒にいた幼なじみ」というだけ。
「あの、さ」
少しの沈黙のあと琉磨くんが口を開く。
「え?」
「その、あいつは明音さんが好きかもしれねえけどさ」
ボソボソと話す琉磨くん。
「え?明音さん?」
突然出てきた明音さんの名前はあたしの頭にはてなマークをたくさん散らばめていく。
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