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「お前、そのことで泣いてたんじゃないのかよ」
「明音さんってなに?」
「いや、あいつが明音さんが本命とか言うから.......」
「そうなの?知らなかった」
たぶん琉磨くんの言う「あいつ」は冬也先輩のことだろう。
でも冬也先輩が誰のことを好きでも関係ないのに、いつまでも琉磨くんは冬也先輩のことを好きだと思い込んでいる。
「俺でいっぱいにさせてやろうか」
フッと琉磨くんが笑ったと思った次の瞬間、チュッと気がついたら唇が触れていた。
あの時とおなじ突然で勝手な2度目のキス。
「ま、またそういうことして!か、彼女にわるいじゃん!」
彼女の話題なんか出したくもないのにどうしたらいいかわからなくて、口から出てしまう言葉。
「はは、そんなのいねぇよ。あの時も今もいねーよ」
なぜだか自嘲気味に笑う琉磨くん。
「え?」
「あんなの嘘だよ」
「どうして.......?」
嘘をついてまであたしと離れたかったのかと思うと鼻の奥がツンとなる。
「嫌えばいいんだよ、俺の事」
「え?」
「俺のことなんか大嫌いだって思って、そんで俺でいっぱいにしろよ。俺で頭ん中いっぱいにするなら俺はお前に嫌われたっていい」
「.......え?」
琉磨くんが愛の言葉を紡いでるような気がするのは気のせいだろうか。
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