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「春日(かすが)ー!」
研究室で実験の準備をしていると先輩があたしを呼ぶ。
「冬也(トウヤ)先輩」
「いい加減さー但野(ただの)のこと連れてこいよ!」
あたしの背中を叩く。
「いったぁー。冬也先輩が行けばいいじゃやいですか」
「あいつ何考えてるかわかんねーもん。お前は幼馴染なんだから俺より分かるだろ?」
「わかりました。探してきます」
席から立ち上がって、ドアへと向かう。
「なんであいつはそんなサボるんだろーな」
「なんででしょうねー?」
それだけ言って研究室から出てドアを閉めた。
「なんであたしが.......」
そんなことを思っても断ることのできないこの性格が嫌になる。
彼には多分もう嫌われてしまっているのに。
但野琉磨(りゅうま)くん、あたしとは家が同じマンションのお向かい同士。
前は仲良くいつも一緒だったはずなのに、大学に入ってからあたしと離れた琉磨くんとは本当に話せなくなってしまった。
琉磨くんのことがずっと好きだったのに、もうしばらく話してなんていない。
そんな琉磨くんはあたしと同じ研究室に所属しているけど、すっかり幽霊所属員。
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