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「ふーん。そいつが好きなんだ?」
さっきとは違って何かを含めたような笑いを浮かべる。
「そんなんじゃないよ」
あたしはただ琉磨くんに来て欲しいだけ。
また同じ空間で一緒に過ごしたいだけ。
それは簡単なようで簡単なことじゃないみたいだから、あたしは冬也先輩のせいにして頑張ってみるしかない。
「行けばいんだろ」
琉磨くんはそう言うと中庭からキャンパスに入っていこうとする。
「りゅ、琉磨くん!」
そんな琉磨くんのことを慌てて追いかけて隣へと並ぶ。
「なんだよ」
「ありがとう」
「別にお前のためじゃねーし」
そういう横顔はどこか赤くて、本当は照れているってことがわかる。
「それでもありがとうなの」
「わけわかんねーな」
あたしの為なんかじゃなくていいから、近くに琉磨くんがいるだけで嬉しい。
大学に入ってから今が一番琉磨くんに近いのかもしない。
こんなに近い距離になれるならもっと早く話しかければよかったと後悔してしまう。
いつも不機嫌そうな琉磨くんにいつしか話しかけるのが怖くなっちゃって、そのまま話しかけるのをやめちゃった。
気持ちは好きなまま、でも距離はきっと誰よりも遠い。
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