聞きたかった言葉と言いたかった言葉

8/16

59人が本棚に入れています
本棚に追加
/16ページ
「おー!但野!」 冬也先輩が琉磨くんに抱きつく。 「やめてくださいよ。気持ち悪い」 そんな冬也先輩にも塩対応な彼は誰にでもそういう感じらしい。 「但野くーん、きたんだねー」 美人で有名な研究室のマドンナ的な存在の明音(あかね)先輩が琉磨くんの肩に触れる。 「あいつがうるさいので」 ちらっとあたしを見る。 「ふーんわにしても相変わらず髪の毛サラサラしてるわね」 先輩もあたしをチラ見して、琉磨くんの頭を撫でる。 「そうっすか?そんなふうにあんま言われないですよ」 琉磨くんは明音先輩の手はよけないらしく、胸にモヤモヤが広がる。 「お?但野は明音の手はよけないんだー?」 「そりゃ、男より女のほうがいいじゃないっすか」 フッと柔らかい顔で「ははっ」と笑う。 久しぶりにみたそういう表情にときめくと同時に、あたしに見せてもらえないことに胸が痛む。 あたしには絶対見せてくれない表情に明音先輩が羨ましくなる。 「明音も俺の頭なんか撫でないくせになー」 冬也先輩がふくれっ面になる。 「冬也より但野くんの方がかっこいいじゃない」 明音先輩がニコッと笑う。 「はいはい。じゃあ俺はー」 冬也先輩がニコニコしながらあたしの元へと歩いてくる。
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!

59人が本棚に入れています
本棚に追加