神武貴士

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 菫とは同じ2年C組のクラスメートで、隣の席になったのをきっかけに付き合い始めた。陸上部と吹奏楽部で部活は別れていたが、たまたま一日おきの活動日は同じだったので、ある日菫の方から一緒に帰ろうと誘われた。  貴士は自分でも口下手で鈍感だと思っている。そのため、どちらかというと今までも菫の方が積極的だったとも思う。  夏休み前に初めて手を繋いだのは貴士の方からだったが、その時も緊張のあまり手汗が酷かった。そんな自分を笑うでもなく、菫は今度は自分から手を繋いできた。  さすがに今では手を繋いで歩くのも慣れてきたが、貴士はここ最近、また緊張するようになっていた。  隣を歩く菫を見ると、紺色の短いPコートを着ている以外は、セーラー服の襟元は首がむき出しだし、短いスカートの下は素足だ。他の女子も似たような服装だが、寒くないのだろうか。 「……寒くないの?」 「平気、平気。電車の中、暑い位だし」  そう言いながらも、菫の吐く息は白く、鼻の頭は赤く染まっている。
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