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ところが彼女の予想した以上のことが起こった。
キスをされたと気づいた瞬間、まるで稲妻に打たれたみたいになって、手から持ってたものが全て落ちた。
唇がゆっくり離れて、見つめ返す貴士の方が驚いた顔をしていた。まるで自分で自分のしたことが信じられないというように。
そして耳まで真っ赤になった貴士が取り繕うように地面に落ちた菫の荷物を拾いはじめると、菫は声を上げそうになり、思わず口を押さえた。
持っていないはずのマフラーが紙袋から飛び出していたからだ。
だが彼自身いっぱいいっぱいなのか、貴士は菫のマフラーを見ても何も気づかず、拾い上げて紙袋に戻しただけだった。
「……帰ろう」
菫の荷物を持ったまま、貴士が少し先を歩き出した。
「首……寒くないの?」
背中に問いかけると、かすかに首を横に振った。
菫は藍色のマフラーに鼻先を埋めると、貴士への初めてのクリスマスプレゼントは同じ色の手袋にしようとぼんやり考えながら、背後から彼の左手を取った。
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