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神武貴士
「あれっ? 比嘉、マフラーは?」
神武貴士が問いかけると、比嘉菫は自分の首元を見た。
「あっ……音楽室に忘れちゃったみたい」
小首を傾げてかわいらしく言われたが、貴士は苦笑した。彼女が学校にマフラーを忘れたのは今週で二度目だ。たしか今朝教室に入って来た時には、ピンクと白のストライプ柄のマフラーを巻いていた。
「取りに戻る?」
「いい。もうこんなところだし」
菫の言う通り、あと30メートルも行かないところに橋が見えていた。そこでいつも二人は別れる。
貴士は橋を渡って川向こうに20分ほど歩くと自宅がある。一方の菫は、ここから5分歩き、さらに電車で3駅先まで帰らなければならない。
学校を出た時すでに7時近かった。川沿いのいつもの帰り道も、12月ともなれば真っ暗だ。今から学校に戻るのは現実的ではない。
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