心の大当たり

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「あっ。やべっ!!」  考え事をしていたせいか、必要以上に力みすぎてしまい天高くコイントスしてしまう。ピィーンと甲高い音を響かせて放物線を描くそれは、バスケットゴールを通して虹色の偽賽銭箱に入ってしまった。ちゃちな賽銭箱の下には黄色い字で『心の大当たり』と書かれている。 「大当たりじゃねぇよ返せって…くそ、結構高い位置にあるなこれ!!」  背は高い方だと思っていたが、背伸びしても頭上のかごには手が届かない。こんな高さにあってどうやって賽銭回収するんだよと文句を言いながら、俺は思いっきり高くジャンプしてかご目掛けて手を伸ばす。だがタイミングが悪かった。俺の手はかごの縁にかかり、落下する自重で壁からべりっと取れてしまった。 「やっ、べぇ。やっちまった…」  後悔してももう遅いが、そもそも人に優しくない設計をした奴も悪い。弁償ということになるのだろうが、かごの中には賽銭が一枚も無い所からここに参拝に来る奴はいないのだろう。これなら黙っとけばバレないだろう…ってそんなことはどうでもいい!!  無い。さっき確かにここに入ったコインがない。硬貨らしき物が一枚もない。落とした衝撃でどこかに転がったかと思い辺りを見渡すと、銀色の見慣れない卵形の物体がひとつ落ちていた。 「なんだこれ…カプセル?『燃やして』って書いてあるぞ。」  拳大の大きさのカプセルらしき物は継ぎ目が無く、何かナイフの様な物の切り傷で燃やしてくれと掘られている。その見た目からしてこの世の物ではないのが容易に想像できる。  一体何なんだこれは。神様からの贈り物か? コインのお返しってことか? はたまた罰当たりへのちょっとした仕返しということか? いずれにせよ返してもらわないと困るのだが…
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