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「燃やせっていったて、ライター程度じゃ燃えないし、焼却炉みたいなのじゃねぇと…」
カプセルがキラリと一輝きし、その先にある焼却炉らしき物を照らした気がした。正方形で黄色一色の可愛らしい焼却炉は長いこと放置されているらしく、中に枯れ草が溜まっている。炉には黒い字で『心の貧乏出ていけ』と書かれている。
「…ここで燃やせってか。」
意味不明だがここまでお膳立てされて乗らない奴はいかないだろう。俺はライターで枯れ草に火を付けて、炉の中にカプセルを放り投げる。赤々と燃えていく炉は白い煙をもうもうと吐き出しながら、凍える潮風で冷えてしまった俺の体を暖める。ボヤ騒ぎになるかと脳裏を掠めたがここは辺鄙な所にある神社の一角。誰一人騒ぎ立てる者はいなかった。
最初こそパチパチと音を立てて騒がしい炉だったが、次第に音は小さくなり潮風の寒さを凌ぐには心許ない大きさの火になった。これなら火傷はしないだろうと思い俺は炉を開け中身を確認する。あんなにあった枯れ草は軒並み灰塵に帰しており何もかも黒一色の無になっている…一枚の写真だけを残して。
「なんでこれだけ…あのカプセルみたいなのに入ってたのか?」
写真には二人の幼い男女が写っている。修学旅行の最中のなのかバスの席みたいな所で女の子が隣の男子の腕に抱きついて、カメラに満面の笑みを向けている。男子はその女子の行いを嫌そうに思っているのか、窓の外にしかめっ面を向けている。
この二人には見覚えがある。というかこの男子は俺自身であり、その隣の女の子はこいつの対価として奪われたコインをくれた子だ。
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