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「逃げてきたんだ?」
「!」
びくっ! と、触れ合う体ごしに紅葉の動揺が伝わり、大輝はその顔を覗き込む。
「女装させられて、奴らから隠れるためここに逃げ込んだ。 脱ごうとしたものの、着替えがない。…だからずっとここに隠れていた」
(ほぼあたり。でも△)
自分の目を覗きこんでくる大輝の目から視線を逸らしつつ、動揺して、大輝の腕にしがみつく。
…確かに、脱ぐためにここに飛び込んだ。
でも、着替えがないからここにずっといたワケじゃない。
一度はメイド服を脱いだ。
それでもまた着たのだから、ハラさえくくればここから出て、帰ることだって出来たのだ。
でも
でも…
紅葉には…そうできない『事情』が、あった。
(あ、あいつら…っ、ぜって~許さねぇからな…!)
首筋まで朱に染め、涙目になっている紅葉を見た大輝は、自分の推理が合っていることを確認し、紅葉を安心させるようにポンポンと細いその肩を叩いた。
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