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「大丈夫。…オレが来たからには、的場を泣かせるようなことはしない」
「…ホント…?」
涙にうるんだ瞳が、微笑む大輝を一心に見つめる。
自分の腕にしがみつく手を取ってはずし、こくり、と頷いてみせる。
(こいつになら…)
見られても…平気かも、と思い、ホッとした紅葉はにっこり笑って大輝から離れた。
「このブレザー着ればだいぶ目隠しになるだろ」
「!! ちがうっ!」
着ていたブレザーを脱ぎかけていた大輝は、紅葉の大声に動きを止めた。
「…的場?」
スクッ! と立ち上がり、握りこぶしを震わせる紅葉を見上げ、大輝は目を丸くする。
(どうしよう…どうする…!?)
紅葉の心臓が、有り得ないくらいの速さで高鳴る。
血管が、首元でドクドクいっているのが分かる。
でも、もう躊躇っていられる時間はない。
覚悟を決めたはずなのに、やっぱり恥ずかしい気持ちがこらえられなくなった紅葉の大きな瞳から、涙がぽろりと一粒零れた。
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