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室内は真っ暗になり、向かいの教室の明かりが眩しく感じ始めた頃――…
「うしろ、向いてるから」
大輝に背を向け、再びスカートをたくし上げた紅葉に、扉の前を占領されて…
「ね…早く」
(――…ダメ。 これ以上は自主規制)
ほぼ二時間前にあったことを詳しく思い返していた大輝は、カアッと赤くなって口元を手で覆い、回想を途中で止める。
…下着を大輝に脱がしてもらい、教室に帰って大輝と一緒にクラスメートをシめた紅葉は、お腹も満たされて満足し、今日のことはすっかり
「なかったこと」
にしたようだ。
(…やれやれ)
「すっげー星! 流れ星、ないかな」
人の気も知らないで脳天気なことを言う紅葉を見て、大輝は鼻から息を吐いた。
――今日のことは、紅葉にならって早く忘れよう。
紅葉の下着姿にドキリとさせられたことや
彼女がありながら、ちょっと変な気を起こしかけたこと…
大事な友達にそんなこと思ったら、あのバカ連中と変わりなくなるじゃないか。
幸い、当事者の紅葉がいつもと変わらず大輝に接してくるのだし、イレギュラーな出来事として、忘れるのが一番なのだ。
「じゃ、また明日」
「…ああ」
帰り道が別れる道の角で、紅葉が明るく笑った。
にこっと、無邪気に笑う紅葉に軽く手を上げ応えると、軽やかな足取りで紅葉が走り去る。
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