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(…)
街灯の明かりから紅葉の姿が見えなくなるまで見送った大輝は、ぼんやりと霞む頭を引きずったまま踵を返し、帰路に着く。
そんな大輝の脳裏に、紅葉の女装姿が唐突に甦ってきて、体全部の感覚が過去へと引き戻される。
――薄明かりに浮かび上がる、女の子のようなほっそりとにたシルエット。
涙に濡れた瞳が、目を閉じなくとも鮮やかに甦る。
「ひゃっ…!」
大輝が紅葉の下着に手をかけた瞬間、指先に感じた…肌の震え。
トクン、と心臓が高鳴り、その怯えたような仕草に…ときめいてしまった。
「…そりゃ、そうなるよな」
ズボンのポケットに手をつっこみ、認めるのが恐かった感情を、大輝は自分に根負けして認めてしまう。
羞恥に震える紅葉は、可愛かった。
愛しかった。
(でも、もうおしまい)
すっかり自分を取り戻した紅葉は、いつもの気が強くて負けん気で、見た目とは全く違う
「男らしい」
紅葉に戻ったのだから。
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