40人が本棚に入れています
本棚に追加
カラスが鳴き、美しい夕日のだいだい色が校舎を照らす。
備品室の鍵を締めにきた美杉大輝は、室内に誰かいないか確かめるために、ドアを開けて中に入る。
体育館の影になる室内は、薄暗い。
(…誰もいないな)
積み上げられた机や、備品しかないのを確認した大輝は、ため息を零して踵を返した。
ガタッ
「…」
物音。
(誰かいるのか?)
ゆっくりと振り返る。
薄い膜がかかったような空気に目をこらすと…積み上げられた机と、ロッカーの間に人影が見えた。
「誰?」
ぽつり、と、しかし隠れている相手を恐がらせないように問いかけると、身をひそめていた人影が、ゆっくりと姿を現わした。
「オ、オレだよ…美杉」
「! 的場か?」
メイド服に身を包んだ紅葉を見て、大輝は驚いた声を上げる。
.
最初のコメントを投稿しよう!