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「待ったか?」
いつもの様に、バイト先であるカフェへ自家用車である黒のボックスタイプの高級外車で迎えに来てくれたのは超人気俳優の龍ヶ崎翔琉。
「いえ」
いつも通り夜の十時で上がった俺、高遠颯斗は、いつになくソワソワしていた。
だって、今日はクリスマスイブだ。
正式に翔琉と付き合って、身体の関係を伴うようになってから初めて二人だけで迎えるイベント。
去年の今頃、受験生だった俺には全く想像も付かなかった今がここにはある。
まさか世間の誰もが羨む超人気俳優と親密な関係になってしまうとは……。
「今日は自転車、無いんだな」
十月クールのドラマ撮影を先週クランクアップした翔琉の髪色は、既にいつも通りの明るい茶色へと戻っていた。
黒髪の翔琉もカッコよかったが、俺はやはりいつも通り明るい髪色の翔琉の方が好きかもしれない。
今夜の翔琉は、黒のPコートにライトグレーのクルーネックのニット。インナーはパリッとアイロンのかかった白シャツ。ボトムスは、カジュアルにネイビーのデニムパンツだった。
先端までピカピカに磨かれた革靴は、一目で高級ブランドのものだと分かる程良質なものだ。
全てが洗練されたこの男に、改めて見蕩れてしまっていた俺は返事するのを忘れ、沈黙してしまう。
「……颯斗?」
怪訝そうな声の翔琉に、俺はハッと我に返る。
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