第一話:桂 月花(かつら つきか)

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第一話:桂 月花(かつら つきか)

「ねぇ、これで何回目かな?」 人びとが疲弊し、行き場のない負の因子が当たり前のように増幅していく中で、終わりのない浄化作業に追われる日々。 それが私の毎日だった。 「・・何度目だろうね・・」 相棒はとても静かにそう言った。 残念で仕方がないのだが、ここまで負の連鎖が大規模になってしまっては、人々の暴走を未然に止めることはとても難しい。 「・・また、明日も頑張らないとね。」 そう。これは私が選んだ道だ。 これからも続けるより他に道はない。 「ツキカ、ごめんね。 私が辛い道に引き込んでしまったね・・」 そういう相棒に、 「なに言ってるの? 私は音楽が好きなの。 音楽を愛していると言ってもいいわ。 その音楽で多くのものを浄化できるなら、これほど私に合っている事はないわよ。」 と言った。 それでも、相棒の表情は曇ったままだ。
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