第一話:桂 月花(かつら つきか)

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 三日後、山の中腹から浜辺の町を見下ろしていた。 ・・町全体が、焼き払われている・・ 焦げた臭いが、風に乗って鼻を刺激する。 浜辺の町についてみると、その光景は想像を絶するものだった。 焦土と化した大地と、言葉に出来ないほど無惨な姿を晒している亡骸たち。 そして、かつて人だったはずのおびただしい数の怨念たち・・。 私は早速ロッドを構えて演奏する。 その音色を受けて、相棒の身体がぼんやりと光りだす。 そして、周囲を暖かい光が包み込み、浄化していく。 苦痛に満ち満ちた表情の怨念たちが、穏やかになって、そして、暖かい光に包まれてゆっくりと浄化されていく。 その浄化に、丸一日かかった。
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