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それを今も、披露する。
「それで、王様の所へ戻ると殺されるからって、別ルートで帰るんですよね?」
「あぁ、そうなんだが――」
彼は絶句をしたきり聖書から目を顔を上げ――、今度は閉じてしまった。
「部長?」
「もう、止めよう」
「⁉」
大磯は、聖書を持ち上げようとした彼の左手を掴んだ。
「ス、スミマセン‼オレ、ちゃんとしますから!だから!だからっ‼お願いします!部長に見捨てられたら、オレ、どうしたらいいかっっ!」
「大磯――」
彼は、銀縁の眼鏡に護られた瞳の光を、不意に和らげた。
「見捨てたりなんかしないさ。部活の後輩で、新たに生徒会を担うおまえを見限ったりはしない。ただ、方法を変えようと思っただけだ」
「部長・・・・・・」
柔らかくなった視線を大磯から外し、彼は言った。
ごくわずかだったが、声が震えている。
「だから、その・・・・・・手を離してくれないか?」
「あぁっ⁉スミマセン‼」
慌てて手を引っ込めた大磯は、彼の背けた横顔を盗み見た。
目の下、――頬の一番高いところがほんの少しだけ、赤く見えるのは気のせいだろうか?
ちゃんと確かめたくて、もっと見たくて、大磯は椅子から腰を浮かせた。
その時、先んじて部長が立ち上がった。
「部長?」
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