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§4
その花屋さんを出てから、私はすぐに後ろを振り返った。
もうここで、彼とは別れよう。
いつまでもぐずぐずしていても、申し訳ない。
「じゃあ、告白、がんばってね」
彼はうなずく。
「また今度、結果を教えてね」
彼の腕に抱えられた花束は、どんな女の子が受け取るんだろう。
「いいなぁ、私もこうやって、告白されたかったな」
「誰にですか?」
「好きな人から」
「いるんですか?」
「もうふられちゃったけど」
「えっ、いつです?」
後輩くんは、驚いた声をあげる。
「今、この瞬間」
せめて、にっこり笑って言おうと心に決めていた。
「今、目の前にいるキミに」
彼の動きが、ピタリと止まった。
「ウソ! 冗談よ。ごめんね、大事な時に変なこと言って。じゃあ、がんばって!」
さぁ帰ろう。
本当はずっと我慢していた。
こぼれ落ちそうな涙が、彼に見つかる前に。
「ちょっと待って下さい!」
その声に、私は振り返る。
「好きです。僕とつき合ってください」
目の前に、大きなバラの花束が差し出された。
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