§1

1/1
前へ
/5ページ
次へ

§1

 その日の夜だった。 「あの、今日の夜、何か予定あります?」 二つ年下の新人くん。他の部署から転任してきた。 「特に用事はないけど」  私より少し背の高い、ほっそりとした華奢なタイプの男の子。 「ちょっと聞きたいことがあるんですけど」  仕事のことかと尋ねたら、違うと首を振るので、じゃあ終わってからねと返事をした。 「突然ですいません」  まっかな顔をして、そそくさと立ち去るから、なんだかこっちも恥ずかしくなる。 彼が転任してきてから半年、ずっとめんどうをみてきた。 少しぼーっとしてて頼りないけど、憎めないかわいらしさと愛嬌がある。 よく出来た弟みたいで……ちょっといいなって、思ってた。
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10人が本棚に入れています
本棚に追加