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「その人の好きなものは?」
「わかりません」
「聞けばいいじゃない」
「だから聞いてるんです」
「どんなタイプ?」
彼は首をかしげると、ちょっと考えてから言った。
「なんていうか、その、ちょっとおっちょこちょいで、しっかりしてるけどどっか抜けてて、なんかこう、俺が守ってあげなきゃって思うタイプです」
私は呆れた顔で、彼を見上げる。
「あんたに守ってもらわないといけないような女の子って、よっぽど抜けてるのね」
「まぁ、天然ですからね」
うれしそうに、にこにこしながら照れ笑いするから、聞いてるこっちがバカらしくなる。
「お腹、すきません? なんか食べます?」
「は?」
「今日つき合ってくれたお礼に、僕がおごります」
「いらない」
「え? なんでですかぁ~!」
歩調を早めた私を追いかけて、彼は隣に並んだ。
「どっかで、ご飯でもって思ってたんですけど」
「いいって、気にしないで」
「なんか、怒ってます?」
「キミにこれだけ信頼されてて、ホントありがたいわ」
「じゃ、じゃあ、先輩の好きな焼き鳥か、あ、手っ取り早くラーメンにでもします? どうですか? え、やっぱダメ?」
「いまダイエット中なの、あんたの用事を済ませたら、家に帰って一人で食べるから安心して」
ふと見ると、目の前に一件の花屋さんがあった。
「花束は?」
「花束、ですか?」
後輩くんの顔がゆがむ。
「だって、花束って、もらって困るものランキングの常連じゃないですか」
「うれしいものランキングの常連でもあるわよ」
「花束だけはやめろって」
「誰が言ってたの?」
「どっかのウェブニュース」
私は迷わず、花屋に足をふみ入れた。
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