§3

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§3

店に入ると想像以上に中が広くて、色とりどりの鮮やかな花たちが、ところせましと並べられている。 「わぁ~キレイ!」 「花、好きなんですか?」 「花は嫌いなの?」 「僕はどっちでもいいです」 「相手の彼女のことを聞いてんのよ」  そう言うと、うつむいて何かブツブツ文句を言い出したけど、相談相手に私を選んだキミが悪いんだから、仕方がない。 「あ、ほら、やっぱり告白するなら、バラの花束でしょ」  店内の一角、ショーケースの中に鎮座する立派なバラたち。 「定番すぎません?」 「私だったら感動する」  ベルベットのような、鮮やかな深紅のバラの花束。 一度くらい、こんな立派なバラの花束を渡されて、好きな人から告白されてみたい。 「これに決まり」 「えぇ~!」 「店にあるの、全部」  そう言うと、彼は困ったような顔をする。 「やっぱり、やめとく?」 「でも今日、この後告白するって、決めてるんです」 「約束してるの?」  彼はこれ以上赤くなれないだろうっていうくらい、まっ赤な顔をしてうなずいた。 「じゃあ、急がないとね」  私に言われるがまま、彼はその腕に抱えきれないほどの、大きな花束を買い求めた。
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