よる

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よる

「これからはもう、1人で行かないでね」 とあたし・・・心音は告げた。あたしの横で、瑠花もうんうんと頷いている。りりちゃんは 「ごめんなさい・・・」 と悲しそうに呟いた。あたしは 「分かってくれたらいいよ〜」 と笑った。しばらくそのまま笑いあった。 少し間を空けて、瑠花が 「ねぇ、ここに来てからもう、1日はたったよね?」 と目を見開いて、震えながら言った。 「そう、だっけ?よく分からん」 あたしが言うと、瑠花は 「そうだよ!なのに、ここ、ずっと日が昇ったまま・・・何で夜がこないの?」 と言った。 「・・・・・・よ、る?」 よる・・・って何?何だっけ? 「ねぇ、瑠花。よるって・・・何?」 あたしがそう聞くと、瑠花はぎょっとしたような顔になった。瑠花が何か言う前に、りりちゃんが 「え?・・・あの、ほら、星とか月とか出て、暗くなる、時間」 と空を指さして説明してくれた。でも 「え?分かんないよ・・・何言ってるの?」 としか言えない。あたしには分からない。 ・・・そもそも、月って何だっけ。 慌てながらも、思い出そうとして、必死で考えを巡らせる。 大事なことを忘れている気がする。 でも、思い出せない。 「瑠花。あたし、もう少しで思い出せそうなの。写真とか、ない?」 と尋ねる。瑠花がすぐに 「ちょっと待って」 と言い、スマートフォンを出した。
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