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忘れてる気がする
「ん、あった!」
そう言って、瑠花がスマートフォンの画面を突きつけてきた。あたしはそれを見る。
「夜!そうだ!これだ!」
あたしは思わず叫び、瑠花の手からスマートフォンを取って、じっくり眺めた。
ものすごく、懐かしく感じた。
さっきのあたしの叫びに、りりちゃんが驚いたようだけれど、あたしの目にそれは映らなかった。周りのことが目に入らなかった。
「なんで、何で・・・何で忘れてたの?あたし」
言っている途中で、涙が溢れてきた。何だかわからないけれど、強烈な怖さ、寂しさに襲われたのだ。
それから少し間を空け、気持ちを落ち着けてから
「まだ何か、大切なことを忘れてる気がする・・・」
とあたしは言葉をこぼした。
りりちゃんが、うんうんと頷く。
瑠花は
「え・・・そうかな?私も忘れてるのかな?」
と首を傾げ、不安げに瞳を潤ませた。
「そうだよ!きっと・・・」
あたしは、大粒の涙を零しながら叫んだ。
瑠花がぎょっとしたような顔をしながら、泣くあたしの右手をそっと握る。
りりちゃんもやってきて、あたしの左手をそっと握り、心配そうな目であたしを見た。
2人とも、あたしを慰めようとしてくれているのだろう。それが痛々しいほどに伝わった。
でも、どうにもできなかった。
代わりに
「あたし達、ここに来てからおかしくなっちゃったのかもね・・・」
と呟いた。涙が止まらなかった。
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