ぐえっ

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ぐえっ

「う、うわぁっ!」 パチ、と目を開けた。 私は、芝生の上に横たわっていた。 草が手に刺さって痛い。 どうやら、眠っていたみたいだ。 ガバッと起き上がると、心音とりりちゃんが、心配そうに、私の顔を覗き込んできた。 「な、何?」 瞬きをしながら私がそう言うと、心音が 「めっちゃ心配した〜〜!」 と言って、抱きついてきた。 (心配したのはこっちもだよ・・・りりちゃんがいきなり消えちゃったりしたから) そんなことを考えながらも 「ぐえっ」 心音の力の強さに、変な声が出る。身動きが取れない。仕方なくそのままで 「ここどこよ・・・」 と呟く。するとりりちゃんが 「わかんない。ボクたちも、気づいたらここにいたの」 と答えてくれた。私はそれに 「そっ、かぁ・・・」 と返してから、心音を引き剥がした。 心音がムゥ、という顔をするのは無視して 「よし!私もう大丈夫だから、進もう!」 と明るく言い放ち、りりちゃんに向き直って 「どっちに行けばいいか、教えてくれる?」 と尋ねた。だいぶ、自然に話せるようになってきたかも。 りりちゃんは 「わかった!」 と言い、サクサクと芝生を踏みながら歩き出した。
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