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チョウチョ
走っているうちに、道の芝生が減り、苔が多くなってきた。
しばらく走ってから
「はーっ、ボク、も、う、だめ・・・」
りりちゃんが、肩で呼吸しながら言い、しゃがみこんだ。それも無理はない。私のペースで走らせてしまったし・・・
「私、も、げんか、いだ・・・少し、休も・・・」
と切れ切れに言い、りりちゃんの隣にしゃがみこんだ。それから
「ごめん、ね、急がせて」
とりりちゃんに言う。りりちゃんは
「心音の、ため、だもん。大丈夫」
と笑った。
しばらくそうして、休み、息を整えてから立ち上がった、その時。
ヒラ、ヒラヒラッ
何かが、私達の目に映った。
それは、すごく懐かしい感じのするものだった。でも、何なのかは分からない。
「何、これ・・・?」
私が呟くと、りりちゃんが
「・・・え?」
と私を凝視してきた。私は
「え?」
と返す。するとりりちゃんは
「瑠花、忘れちゃったの?この子、チョウだよ!チョウチョ!」
「チョウチョ?」
私は聞き返しながら、記憶を探る。しばらくそうしてから
「あっ!あの、庭とかで花の蜜吸ってるやつ!?」
と叫んだ。りりちゃんが
「それだよ!・・・思い出してくれてよかった」
と言った。私は、頷きながらに、チョウチョを見る。未だに、それは私達の前をさまよっている。私と同じようにそれを見ていたりりちゃんが、突然
「行こ」
と静かに呟き、チョウチョについて行き始めた。私は戸惑いながらも、りりちゃんの言うことは聞いた方がいいと考え
「うん」
とだけ言って、進みだした。
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