いない

1/1
前へ
/63ページ
次へ

いない

私は 「キャッ」 と小さく悲鳴をあげ、目を瞑った。 少ししてから、私は恐る恐る目を開けた。 ・・・景色が、変わっている。 さっきまでは、近くに海があったのに、ない。さっきまで海だったところには、ずっと花畑が広がっている。 ・・・まるで、世界の果てまで広がっているんじゃないかと思うくらい、ずっと。 その花々の隙間に、狭い足場があって、私はそこに立っていた。 「きれい・・・」 花を見つめ、私は呟いた。そこでハッとした。何で今まで気づかなかったのか。 「心音ちゃん!!!!!」 叫んで、辺りを見回した。いない。どこにも見当たらない。 「あ・・・そうだ!!」 怖さを振り払うように明るい声で言った。それから私は、震えながらスマホを手に取る。ダメもとで心音に電話をかけてみることにしたのだ。慌てているのと怖いのとで、手が震えてしまう。上手く操作できない。 それでも何とか電話の画面を開いて、心音にかけてみた。
/63ページ

最初のコメントを投稿しよう!

74人が本棚に入れています
本棚に追加