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(ここまでするか、普通! あの教師何考えてんの?)
焦燥と動揺と苛立ちが、同時に姫乃を襲う。
姫乃は写真の一枚を手に取ると、あの教師がいるであろう資料室へと向かった。
廊下を走ったのは、彼女にとって初めてだった。
それほどまでに、姫乃は焦っていた。
なによりも自分の判断ミスで、あれほどまでの怪我を当真に負わせてしまったことを後悔していた。
(舐めてた……にしても、どうして間宮夕夏のためにそこまでするわけ?)
ノックもせずに、資料室の扉をスライドさせる。
扉は勢いよく壁にぶつかり、大きな音を立てた。
「どうした佐伯。そんな怖い顔して」
日吉朝春は、椅子に座っていた。
「どうしたじゃないですよ……コレ」
姫乃が写真を見せつけると、日吉朝春はわざとらしく驚いた。
その惚けた表情が、姫乃をさらに苛立たせる。
(決めた。こいつは直々に私の下僕にしてやる。奴隷になる屈辱を味合わせて、社会的に殺してやる)
「惚けても無駄ですよ。これやったの先生ですよね」
「おいおい、さすがに濡れ衣だろ」
「先生、昨日夕夏ちゃんを保健室に連れて行った後、資料室にいきましたよね」
姫乃は有無を言わせないよう、一息に続ける。
「私、昨日聞いたんですよ。資料室の前を通りがかったとき、茜ちゃんと一緒に当真くんを誘拐する計画を立てていたところを」
(大丈夫、問題はない。先生は昨日の時点で生徒からの信頼を失っている。私が怪しんで、聞き耳立ててもおかしくはない)
つまり、盗聴で聞いたとは限定できない。
間髪入れずに、姫乃は叩きかけた。
「メールもあなたが犯人なんじゃないですか? 生徒の相談聞くふりをして弱みを握ろうとしたんだ。これ、私がクラスのみんなに話したら先生の人生終わりですね……」
(疑っても無駄だ。盗聴を聞いた証拠はない。仮に私が怪しまれたとしても、先生への不信感の方が大きい)
噂が広まれば、学校では生きていけない。
(私に媚びろ。そして奴隷になれ!)
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