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ずっと黙っていた日吉朝春が、ようやく口を開いた。
「お前、資料室の前にいたのか?」
「そうですよ。私も先生のこと怪しいと思ってたんで」
「そうか」
言いながら、ゆっくりと立ち上がり姫乃を見据えた。
「お前が犯人だったんだな、佐伯」
「は? なにを言って……」
姫乃は彼の言葉の意味がわからなかった。
「それじゃあ、ちょっと付き合ってもらおうか」
朝春は姫乃の言葉を無視して歩み寄る。
姫乃には見えないよう、スタンガンを体の後ろへ隠しながら。
「意味わかんない。私はただ資料室で……」
「俺は昨日、資料室には行っていない」
目の前までやってくると、朝春は冷たく言い放った。
「なっ、そんなわけ────」
瞬間、姫乃の視界に火花で散った。
「っあ、が」
力が抜け、膝から崩れ落ちてしまう。立ち上がろうにも力が入らない。
「ありがとよ。引っかかってくれて」
頭の上から、声が聞こえた。
「会いたかったぜ、元凶(はんにん)」
冷めた声を最後に、姫乃の意識は途切れた。
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