8

1/4

331人が本棚に入れています
本棚に追加
/140ページ

8

「三度目のループの時、戸島はバラされるはずじゃなかったと言っていた」 戸島が夕夏を誘拐した日。 戸島は帰り際に「明日、登校しなければバラす」と犯人に忠告された。 「だけど結局、戸島は登校したのにメールでバラされた」 「理由があると?」 天使が首を傾げる。 「坂本を庇ったんだ。あの時、俺が坂本に掴みかかり、加藤が襲う気はあったと失言をした。 あの場にいた奴らは坂本たちを疑ったはずだ。それを阻止したかったんだろ」 疑いを戸島へ移すことで、坂本を守ろうとした。 「秘密の拡散の時もそうだ。坂本を守る形で、あいつの秘密がメールに受信された」    坂本も被害者の一人にするために。 「つまり、犯人は坂本に執着している」 「それを利用したってわけか」 天使の視線を移す。 その先には、パイプ椅子に手足を縛られた佐伯姫乃の姿があった。 場所は、先日、夕夏が誘拐された廃工場。 佐伯が夕夏たちを苦しめた場所だ。 「ん……──!?」     佐伯が目を覚まし、目を見開いた。 どうやら即座に自分の状況を理解したらしい。 「よう、やっと起きたか」 「こ、こんなことして、なんのつもりですか! さっさと外してください!」 姫乃の髪を掴み、持ち上げる。 「白々しい演技はよせ。盗聴していたのも、メールもばらまいたのも、全部お前だろ?」 「私は資料室の前で先生たちの会話を聞いただけですよ? そんなので決めつけるなんて───」 「資料室で俺たちの会話が聞けるはずがねえんだよ」 理由は単純だ。 「俺は昨日、一度も資料室に行っていないからな」
/140ページ

最初のコメントを投稿しよう!

331人が本棚に入れています
本棚に追加