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「三度目のループの時、戸島はバラされるはずじゃなかったと言っていた」
戸島が夕夏を誘拐した日。
戸島は帰り際に「明日、登校しなければバラす」と犯人に忠告された。
「だけど結局、戸島は登校したのにメールでバラされた」
「理由があると?」
天使が首を傾げる。
「坂本を庇ったんだ。あの時、俺が坂本に掴みかかり、加藤が襲う気はあったと失言をした。
あの場にいた奴らは坂本たちを疑ったはずだ。それを阻止したかったんだろ」
疑いを戸島へ移すことで、坂本を守ろうとした。
「秘密の拡散の時もそうだ。坂本を守る形で、あいつの秘密がメールに受信された」
坂本も被害者の一人にするために。
「つまり、犯人は坂本に執着している」
「それを利用したってわけか」
天使の視線を移す。
その先には、パイプ椅子に手足を縛られた佐伯姫乃の姿があった。
場所は、先日、夕夏が誘拐された廃工場。
佐伯が夕夏たちを苦しめた場所だ。
「ん……──!?」
佐伯が目を覚まし、目を見開いた。
どうやら即座に自分の状況を理解したらしい。
「よう、やっと起きたか」
「こ、こんなことして、なんのつもりですか! さっさと外してください!」
姫乃の髪を掴み、持ち上げる。
「白々しい演技はよせ。盗聴していたのも、メールもばらまいたのも、全部お前だろ?」
「私は資料室の前で先生たちの会話を聞いただけですよ? そんなので決めつけるなんて───」
「資料室で俺たちの会話が聞けるはずがねえんだよ」
理由は単純だ。
「俺は昨日、一度も資料室に行っていないからな」
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