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やがて、諦めたように大きな溜息を吐いた。 それから俺を見上げる。 「あのタイミングで私が聞いてなかったら?」 「関係ない。確認と称して似た会話を何回かやった。 清水を連れ出せば犯人は俺を怪しむだろうし、 聞き逃す可能性の方が少ない」 「私がメールで拡散してたら?」 「犯人をあぶり出すための演技だったって言うだけだ。実際坂本は怪我一つしてないからな」    誘拐の演技までは付き合ってもらったが。 「ま、犯人なら自分で助けにくると思ってたよ。夕夏に一途な坂本から気を惹く、大チャンスだもんな」 「それもわかってたの……?」 姫乃が苦笑する。 「ははは、降参。私の負け」 「どうして天文部に盗聴器をしかけなかったんだ? 仕掛けていれば坂本のことも知れるし、誘拐の阻止についても予測できただろう」 「はあ? バカじゃないの? 好きな人のプライバシー犯せるわけないでしょ? それに当真が私の陰口言ってたら嫌じゃん」 姫乃はさも当然のごとく言い放った。 理解はできないが、こいつなりの基準があるらしい。 「盗聴器はあくまで夕夏を自殺させるため、材料集めに使っただけ。あーあ。親の権力使って、大金までかたのに、最悪……」 全てバレたからか、姫乃は堂々と吐き捨てる。 「当真はあいつのことばっかり助けるし……私も、当真に助けてもらいたかったな」 天文部の隣で自分を襲わせたのは、それが理由か。 坂本たちが来ることを予見して……。 ということは、夕夏が飛び降りたのも坂本たちに見せるためにこいつが仕組んだのかもしれない。 どんな手を使ったか、今となっては確認しようもないが。
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