8

4/4

331人が本棚に入れています
本棚に追加
/140ページ
「ほら、認めたんだからコレ解放してよ」 「誰が解放するなんて言ったよ」 「は? 認めたんだからもういいでしょ? これ以上なにをしろって──!?」 足元に置いていたボストンバッグのファスナーを開く。 中から取り出したのは虫籠だった。 中身はゴキブリだ。 佐伯の余裕に満ちた顔が、一気に青ざめる。 「お前には、夕夏を苦しめた分だけ苦しんでもらう。まずはこいつだ」 「は、はぁ!? 意味わかんない! なんでそこまで……」 虫籠をひっくり返す。 大量のゴキブリが佐伯の頭の上へボトボトと落ちていく。 「いやあああああ!!」 佐伯が必死に暴れ回った。 しかし両手足を椅子に拘束されているため、逃げる事はできない。 佐伯に身体の上でゴキブリたちが蠢く。 「夕夏に食わせたんだろ? ほら、お前も食えよ」   床に落ちた一匹指で捕まえて、佐伯の口の中へ押し込む。 「う……おっぅえ!!」 佐伯が盛大に吐いた。 ゴキブリは嘔吐物の中で元気に溺れていた。 「えげつないなぁ、君も。全員笑顔で終わらせるんじゃなかったのかい?」 天使が口元を押さえながら俺を見る。 こいつでも気持ち悪いと感じるのかもしれない。 「こいつは例外だ」 夕夏を死に追いやった人間が、笑顔で終わっていいわけないだろう。 「さてと、次は……」 ボストンバッグへ手を伸ばした時。 「ま、まっで!! 私は、わるぐない!」 口元を汚しながら、佐伯が必死に叫んだ。 「まだ言うかよ」 「本当なの! 信じて! だって……だって全部、夕夏に頼まれて仕組んだことなんだから!」 「────は?」
/140ページ

最初のコメントを投稿しよう!

331人が本棚に入れています
本棚に追加