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「ほら、認めたんだからコレ解放してよ」
「誰が解放するなんて言ったよ」
「は? 認めたんだからもういいでしょ? これ以上なにをしろって──!?」
足元に置いていたボストンバッグのファスナーを開く。
中から取り出したのは虫籠だった。
中身はゴキブリだ。
佐伯の余裕に満ちた顔が、一気に青ざめる。
「お前には、夕夏を苦しめた分だけ苦しんでもらう。まずはこいつだ」
「は、はぁ!? 意味わかんない! なんでそこまで……」
虫籠をひっくり返す。
大量のゴキブリが佐伯の頭の上へボトボトと落ちていく。
「いやあああああ!!」
佐伯が必死に暴れ回った。
しかし両手足を椅子に拘束されているため、逃げる事はできない。
佐伯に身体の上でゴキブリたちが蠢く。
「夕夏に食わせたんだろ? ほら、お前も食えよ」
床に落ちた一匹指で捕まえて、佐伯の口の中へ押し込む。
「う……おっぅえ!!」
佐伯が盛大に吐いた。
ゴキブリは嘔吐物の中で元気に溺れていた。
「えげつないなぁ、君も。全員笑顔で終わらせるんじゃなかったのかい?」
天使が口元を押さえながら俺を見る。
こいつでも気持ち悪いと感じるのかもしれない。
「こいつは例外だ」
夕夏を死に追いやった人間が、笑顔で終わっていいわけないだろう。
「さてと、次は……」
ボストンバッグへ手を伸ばした時。
「ま、まっで!! 私は、わるぐない!」
口元を汚しながら、佐伯が必死に叫んだ。
「まだ言うかよ」
「本当なの! 信じて! だって……だって全部、夕夏に頼まれて仕組んだことなんだから!」
「────は?」
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