10.

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「だからこれは、全部夕夏が始めたの!」     全てを話し終えた後。 椅子に拘束された佐伯が、最後に声を荒げた。 「先輩のバッシュを切り裂いたのもあいつだし、メールで孤立させるように指示したのもあいつ!」 助かりたい一心からか、質問するまでもなく佐伯はしゃべり続けた。 「誘拐したり、盗聴器を仕掛けたのは私ですけど、全部夕夏との約束のためなんですって。先生が助けるから夕夏も揺らいだみたいだけど、あいつは結局不幸になることを選んだの!」 後半の言い訳は、ほとんど頭に入ってこなかった。 もはや全部どうでもよかった。 それよりも。 「じゃあ、犯人は……」 俺が殺すべき生徒は。    「そう。間宮夕夏だよ」    振り返ると、天使が満面の笑みを浮かべていた。 まるでこの時を待ちわびていたように。 「キミの望みは生き返らせること。でも、間宮夕夏の望みは死ぬことだ」 俺の望みと、夕夏の望みは違う。 「生き返らせることは、彼女にとって本当に幸せなのかな?」 死ぬことが、望み? じゃあクリスマスの日に夕夏が飛び降りたのも。 前のループで飛び降りたのも。 全部、夕夏自身が望んだこと? 「さあ、君はどうする?」 「俺は……」 夕夏を生き返らせるには、夕夏を殺さなきゃいけない。 俺の手で。 必ず助けるって、約束したのに。 幸せにするって、約束したのに。 俺にできることは──── 「ねえ、もういいでしょ! 早くこれ解いてよ!!」 叫ぶ佐伯を置いて、俺は工場の外へと向かう。 車で学校に戻るためだ。 「ねえ、聞いてんの! 置いてく気? ふざけんなクソ教師!」 こいつは置いていく。 これ以上こいつに掻き乱されるわけにはいかない。 「決めたかい?」 「ああ」 悩んだって、迷ったって。 もうどうしようもないんだ。 「全部終わらせる」
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