10.

2/5

331人が本棚に入れています
本棚に追加
/140ページ
学校に着いたのは、ちょうどニ限目が始まった時だった。 携帯には牧野先生から何度も着信が入っていたが無視した。 もう教師の仕事をする必要はない。 夕夏を呼び出すためメールを送ると、すぐに返信が返ってきた。 『旧校舎の屋上にいます』 授業には出ていないらしい。 深呼吸をしてから、屋上へ向かう。 『全ての行為は利己的な欲望の産物。ただのエゴに過ぎない。キミは正しいわけじゃない。ただ自分勝手なだけだ。それを受け入れなきゃ……間宮夕夏を生き返らせることはできないよ』 戸島を殺した時、天使はそう言った。 最初は親父と俺を重ねる為の言葉だと思っていた。 でも今ならわかる。 自分勝手を認めるというのは。 親父と同じだってことを認めることじゃない。 俺のエゴで、夕夏を生き返らせるにはことを認めるということだ。 こいつは最初から、そのことを言っていたんだ。 俺の自分勝手は、夕夏の幸せには繋がっていなかった。 なにも理解してない俺は、こいつの目にさぞかし滑稽に映ったことだろう。 屋上の前に着く。 「さ、キミの答えを見せてもらおうか」 天使の言葉を受け、俺は扉を開いた。
/140ページ

最初のコメントを投稿しよう!

331人が本棚に入れています
本棚に追加