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構わない。
夕夏が生きてるなら。
夕夏が幸せでいてくれるのなら。
『似たきっかけで彼女の心が壊れる可能性だってある』
ふと、天使の言葉を思い出す。
わかってる。
こんなの、エンディングを迎えた物語を巻き戻しているだけだ。
いつか同じ道を辿ってしまうかもしれない。
幸せの中に苦しみを覚えてしまう「きっかけ」と、夕夏が再び出会ってしまうかもしれない。
それでも。
「夕夏。苦しいときは言えよ」
もう一人にはさせない。
「どんなに苦しくても俺が必ず、お前を幸せにしてやるから」
今度こそ、約束を守ってみせる。
「たとえ、俺が死んだとしても」
俺の言葉に夕夏はきょとんとしていた。
そりゃ急にこんなことを言われてもピンとこないだろう。
ただいつか、「きっかけ」と出会ったとき思い出してくれればそれでいい。
「なーに言ってんの。約束したでしょ?」
夕夏が俺の手を強く握る。
「二人で幸せになろうって。どっちかが欠けてもダメなんだから」
「──────」
「だからお兄ちゃんも苦しい時は言ってよ。二人で乗り越えよう。兄妹なんだからさ」
「そうだな」
そうだ。二人でなら、きっと──
「なあ、夕夏」
「なに?」
「お前は今、幸せか?」
「当然! お兄ちゃんといるんだから、とーっても幸せだよ」
弾けるような笑顔で夕夏は答える。
「お兄ちゃんは?」
「ああ。俺も、幸せだよ」
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