「  」

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公園で一人の少女が泣いていた。 ベンチに座りながら、スカートの裾を強く握り締める。 「お母さん…」 少女は母子家庭だった。 父親は少女がまだ幼い時に、殺された。 元上司だという酔っ払いにだ。 それからというもの少女の人生は荒れていった。 母親は精神を病み、ギャンブルやホストへ通うようになった。 娘のことなど忘れ、まるで現実逃避でもするように遊び狂い、いつの間にか闇金で借金までしていた。 気がつけば返せない金額にまで膨れ上がり、母親は身体を売るようになった。 それでも母親はギャンブルもホストもやめない。 その皺寄せは、とうとう少女にまできた。 なによりも悲しいのは愛されなかったことでも、母が狂ったことでも、自分が売り飛ばされることでもない。 自分が母親の支えになれなかったことだった。 「もしも、あの時私が……」 お母さんの支えになれていたら──── その時、少女の前に白い羽が落ちた。 「あーあ、かわいそうに」 幼い声が、聞こえた。 顔を上げると。 そこには真っ白な天使がいた。 天使が少女へと手を差し伸べる。 「ねえ君、チャンスをあげようか」                  
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