36人が本棚に入れています
本棚に追加
ロゼとブリードが緩やかな坂を下り終えると、先頭を歩いていたヴォルトが手を上げて、二人に止まるよう指示した。ヴォルトが小声で話す。
「待て。何かいるぞ」
三人は、近くの岩陰に隠れた。人の悲鳴が聞こえてくる。
「ぎゃああああ」
盗み見ると、悲鳴をあげているのが、人魚の少年であることがわかった。港で、魔物を倒すと宣言していた、あの少年だ。
「やっぱり」
人魚の少年は、大木ほどの大きさの、イカ型の魔物から逃げていた。イカ型の魔物が複数の足を振り下ろす。人魚の少年はその攻撃をなんとか回避する。その動きには危うさがあった。攻撃を回避できなくなるのも時間の問題だろう。
「ちょっ。マジ、死ぬ! アイリスさん、まだこっち来てないのかよ。ヘルプミー!」
最初のコメントを投稿しよう!