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タグを拾うと、何処かで見たような名前が連なっている。
どこの誰かは知らないくせに、知りあいだった人の顔が浮かんで、どうしてもその人にしか思えなくなる。……この瞬間は一番好きじゃあない。…だけども、誰かに頼まれたことだったので、私はタグを握りしめ。お疲れ様。……そう一言吐いた。
ブドウ色の機体は、小さく吹いた風にあおられ。
細かいユキにまみれていく。
花々の代わりに枝を備えて。私はコックピットを離れ。
その中で、機械の獣から少しばかりのガラクタを拾いながら、彼に背をわせた。
「”おじさん的には、早目に行った方がいいと思うんだけど?”」
ノイズの入った男性の声。
急かす彼に横やりを入れるように。私は、先ほどの音を彼に伝える。
「フタヒトマル。音がする。」
「”おっ。……じゃあ、2キロ。ってところか。用心に越したことはないけど…。ねぇ。……ニイ。どうする気だい?”」
十数メートルの巨人は、機械質な体を丸めて手を差し出す。
どちらにしても、早く乗れとでも言いたげな彼はいつも通りに小言をはさんでやめようとしない。この言い方だって、彼なりのユーモアと心配を含んだものだったら、真摯に答えられるけど、多少の付き合いで、彼が唯々早く町に行きたいだけ。と察している身としては……まあ、何だ。
それでいて、私が何をしようとしている事も、長年と言える付き合いでわかっているようで、私は迷わず手のひらに乗り、彼の示した通り暖かい密室空間へと戻った。
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