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「…行く。」
「”やっぱり?”」
林を出て、平地が見える高台を目指す。
ディスプレイに映る地図に点を打ち、その横に移されている選択画面から、”徹甲弾”という項目をタップ。ボルトアクションライフル独特の重々しいコッキング音とともに、彼が動く騒音を聞きながら、私は背を椅子に預けて力を抜いた。
「いらぬお節介をかくにしても。荷物が増えるだけにしても。どうせ行くんでしょ?」
「”それを決めるのは、きみだ。…とおじさんは助言しておこう。”」
「……後で小言を言うくせに。」
「”言わない。言わない。おじさん。女性には優しいからね。”」
ウソつき。
彼は小言が好きである。私に対してのそれは長年付き合っているから一番だ。
ガスを吹かす音。雪をまき散らす振動。それを座席越しに感じながら、私は目をつぶった。振動が止まったのは、そこから数分後の事だった。
「”まあ、その方が君らしいとは助言をするが。……ね。”」
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