氷雪繁栄圏 プロローグ

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 南側にある小さな楽園が、楽園らしい姿になったのはほんの千年前の話らしい。  世界人口の一割も人が住んでいないそこは、緑豊かで文明も発達しており、色々なものが豊富だ。食料。周囲の環境。水に鳥。……ついでにパンケーキ。私も好きなモノがたくさんあり、人々は何時に平和に暮らしている。名称が長ったらしい学校を出た学者が言うには、この楽園を取り巻く気候は地帯と呼ばれており、かき氷のように冷たい結晶が埋もれる其処と比較して、”春”と呼称されている。  もともとはその楽園も今の姿ではないらしいのだけれども、そんな話は興味がないので、かれが嬉しそうに聞いているラジオを止めて、私は先ほど回収したタグをジャラジャラとうるさいその中の一つに収めた。不満の声を漏らす彼に、私は寝ている。と目を閉じてマフラーを顔に当てることで伝える。   北へ行くほどに天候は荒れて、様相は”冬”と呼ばれる地帯へと変化をしていく。”冬”。と”春”には境界線があり、そこへ出ると周囲は雪にまみれて何もなくなる。花々や草木が生い茂る楽園とは違い、こちらの様相は寂しいの一言に限る。……あゝ、もちろん。こんな世界だからってなにもないわけじゃあない。暖かい気候になれない連中やら。奇抜な科学者やら。…いろんな人が冬に集まり、”ハチの巣”を作った。  ハニービーと言われる小中クラスのコミュニケーション集落。とでも言ったらいいだろうか?…まあいわゆる、楽園から追い出された者たちが作った”楽園”なのだが。
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