甘やかな吐息

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「あの……」  雑誌で一目惚れしたイギリスブランドのマフラーと手袋。チェスターコートの近藤さんに絶対に似合うと思って買ったけれど、この反応は好みじゃなかったということなのかもしれない。 「あの……近藤さんの趣味じゃなかっ……」 「ありがとう!!!」  私の言葉に被せるようにして、近藤さんが大きな声を上げた。そして目尻に沢山シワを寄せ満面の笑みを作る。 (うわ! 笑顔!!)  この顔は誰が見たってスーパードライだなんて思うまい。  近藤さんは優しくマフラーを持ち上げる。 「一生大切にする」 「ふふ。近藤さんってば大袈裟ですよ」  大切に使って貰えるのは嬉しいけれど流石に一生モノではない。ぼろぼろになったマフラーを巻き続ける近藤さんはちょっと嫌だ。 「いや。そうじゃなくて……」  歯切れの悪い近藤さんは鼻の横を擦る。
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