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豹変した近藤さんの態度にじわりと目頭が熱くなる。彼女の特権だなんて浮かれていた自分が馬鹿みたいだ。
「ごめ……」
謝ろうと口を開き掛けたところで、ずっと俯いていた近藤さんが勢いよく顔を上げた。
ふわりとなびいた前髪の間から現れたのは――
(え?)
頬も額も、耳の先でさえも真っ赤に染まった近藤さんの顔だった。想像していたのとは違う恥ずかしそうな表情に、零れそうになっていた涙が一瞬で引っ込む。
赤い顔はぎゅっと眉間にシワを寄せた。
「頼むから……あんまり可愛いことを言ってくれるな」
「かっ?」
(可愛い!?)
近藤さんは口をもごもごと動かして「……じょとか」と小さく呟いた。私の手首を掴んでいる大きな手が、彼の熱い体温を伝えてくる。
「西園が可愛すぎると……俺がもたない」
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