甘やかな吐息

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「お待たせしました」 「ありがとう」  仕事のときみたい、だなんて考えながら近藤さんの横に腰掛けた。同じ高さにあるオフモードの顔は、距離が近すぎてつい視線を逸らしてしまう。すると次に目に入ってくるのは近藤さんの黒いパンツ。折り曲げられた膝の位置が私のそれと違いすぎて、やっぱりくらくらしてしまう。 (脚長いなぁ。スタイル良いなあ。それともこれくらいの身長なら標準的な……) 「西園」 「はっ、はい」  名前を呼ばれて慌てて顔を上げる。 (スタイルだけじゃなくて、顔も格好良いから)  不埒なことを考えながら整った顔を見つめると、近藤さんは唇を引き結んで目を眇めた。 「開けても良いか?」  そう言って顔の横に紙袋を持ち上げた。私は小さく頷く。 「気に入って貰えると良いんですけど」  近藤さんは僅かに口角を持ち上げて、紙袋の中から綺麗にラッピングされたそれを取り出した。落ち着いたダークグリーンの包装紙に細いゴールドのリボン。渋めのクリスマスカラー。  カサカサと小さな音を立て丁寧に――几帳面に包装紙を開いた近藤さんは、現れた紺色を睨んだまま固まった。 「…………」 「近藤さんに似合うと思って……」 「…………」  否定も肯定の言葉もない沈黙が続く。見慣れた彼の眉間のシワが段々深くなった。
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