甘やかな吐息

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 ピカピカのキッチンを勝手に借りて料理をした。米は炊けると豪語していた割に炊飯器も綺麗なものだった。 (ま。お米も買った位だし)  シチューをことことと煮込みながら洗い物をしていると、寝室のドアが開く気配がした。すると慌てた足音がリビングに飛び込んでくる。 「西園っ!」  大きな声にびくりと肩を竦めた。入り口にはぼさぼさと乱れた髪のまま立ち尽くす近藤さんの姿。怒っているのか顔が強張っている。私は慌てて蛇口を閉めた。 「こっ……勝手にキッチンを使ってごめ……」 「良かったぁ」 「え?」  近藤さんは一瞬で表情を緩め、壁に手をついた。そして大きく息を吐く。 「目が覚めたら西園が居ないから……帰ったのかと」 「えっ? 帰る訳ないじゃないですか」 「そうか……」 「そうです」  にっこりと笑って頷けば、バツが悪そうに鼻の横をぽりぽりと掻いた。
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