甘やかな吐息

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「言い訳がましいが目覚ましが聞こえなくて」 「ええ。ぐっすりでしたよ」 「普段はそんなことないんだが。西園が………………から」 「私が? 何ですか?」  もごもごと呟かれた台詞が聞こえなくて聞き返す。それでも悪口ではない気がするのは自意識過剰だろうか。 「何でもない、気にするな」  近藤さんは赤い顔をして唇を真一文字に引き結んだ。 「シチューはまだ出来ていないので、顔を洗ったりしてきて良いですよ」 「!!!」  近藤さんは複雑な表情で目をぱちぱちと瞬かせると、「行ってくる」と呟いてUターンしていった。紺色の背中が廊下に消える。 (会社では絶対見られない姿。ふふふ。スーパードライとか言われてるのに。ふふふふふ)  私はにやにやと頬を緩めながら洗い物の続きを始めた。
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