甘やかな吐息

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「あっ! ちょっと近藤さんっ!」  近藤さんの手をを押さえようと両手を持ち上げると、その手ごと頭の上で押さえられてしまった。そのまま彼の顔が近付いて来て、ぺたん、と額を合わされる。焦点が合わない距離に切れ長の瞳があり、冷たい眼鏡のレンズが肌に触れた。頭が一気に沸騰する。 「ナ・マ・イ・キ」 「っ!!」  目を細め低く囁かれた声が、私の身体を一直線に貫いた。ビリビリとした電気信号みたいなそれは、私の神経細胞を通って全身に広がっていく。 「こっ……ん」  近藤さんの唇が私の反論を飲み込んだ。二人で迎えた初めての朝は優しいキスで始まった。
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